この4年間で読んで良かった本【10冊】

嫌だなあと思っていても春というものは勝手にやってくるもので、もう少し自分が迷惑な存在だという自覚を持ってほしいと思うばかりである。

 

そんなことを何度か繰り返しているうちに、大学生が終わった。

気が付けば周りの人間も、まるで別人のように成長している。成長というか、進化というか、もはや変態というべき変化を遂げた人間までいる。

 

「ではお前はどうなんだ」と聞かれたら、それは聞かないでくれと手で顔を覆うことしかできない。

めくるめく季節に振り回されているうちに、4年が過ぎた。

ショックを受けていると、実は4年なんて存在しないんじゃないか。俺は夢でもみていたんじゃないかと現実逃避したくなるものである。

 

しかし、本棚に目を向けてみると、自分の4年間が確かに存在したことが分かる。

思えば最初は小さな本棚だった。それが今は、いくつもの大きな本棚にぎっしりと本が詰まっている。

 

そうだ、俺は確かに4年間を生きてきたんだ。

 

4年も過ごしたんだ。俺は大学を卒業するんだ。

たまにはふんぞり返って偉そうなことを言ってみよう。

そう考え、自分の4年間の中でこれは読んで良かったと思える本たちを紹介する。

大学生はもちろん、社会人にもおすすめできるような本を選んだつもりである。

本を紹介するとき、その人に合う合わないという問題が発生するが、これは特定の誰かに向けるでもない、自分が良かったもの、という無責任な紹介なので、参考程度に読んでもらえると幸いである。

また、それぞれの本は後日詳細に感想文を書きたいと考えている。

(やらないかもしれないけど)

 

小説

車輪の下
友達に借りたことをきっかけに読んだ本。ヘッセという作家すら知らなかったけど、あまりに面白かったことを記憶している。
今でも時々読み返しては、いろいろなことを考える。
ハンスという少年が受験競争を勝ち抜いて優秀な学校に進むものの、厳しい学校生活に彼の純粋な心がひどく傷つけられ、そのまま学校をやめて見習い工として自分を見つめなおすお話。
物語の最後、ハンスの運命を悲しいものととらえるか、哀れなものととらえるか、それとも他のなにかか、自分にはこうした表現できない感情がこみ上げてきたように感じた。
私はいわゆる受験に失敗した人であるし、ハンスのように必死に努力をしてきたわけでもないけど、努力の先にこんな運命を突き付けられた少年の心はひどく痛かっただろうなと思う。
高校を卒業すれば、社会人でも大学生でも専門学生でも、それぞれの社会生活が待っている。ハンスの物語は新しい社会生活への一つのアドバイスになるかもしれない。

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車輪の下 新潮文庫

 

草枕
これも友達に勧められて読んだ本。今まで読んできた夏目漱石の作品の中でも特に難しかった。注釈や辞書、前のページを何度も往復して、頭を抱えながら読み終えた覚えがある。解説を読んだときには「ああ、なるほど」となって、それから時々読み返すたびに面白い発見がある。
旅先で芸術について思案する青年画家が温泉場で出会った娘をきっかけに自身の芸術を探すお話。
私は芸術に関しては全くの素人である。美術の授業を真面目に聞いたこともなければ、普段音楽も聴かない。詩もほとんど知らない。
それでも私はこの小説に、芸術をとことん語りつくしているような感じを受けた。
若いうちに芸術ってなんだろうなあと考えるのも、良い経験になると思う。

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草枕 新潮文庫


桜の森の満開の下
好きな物語を一つ挙げよ、と聞かれたら真っ先にこの作品を挙げる。自分にとって衝撃の作品だった。
桜を怖れる山賊と一人の美しい女による怖ろしくも幻想的な物語。
物語の中で多く語られるのは、美しさについてだが、その美しさとは女か、景色か、孤独か、理解できないなにかへの執着か。
桜の花を怖れるとは、どういうことなのだろう。これから先、何度も経験する春という季節、そのたびに咲く桜の花に、少し意識を向けてみるのも面白いかもしれない。

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桜の森の満開の下 岩波文庫

 

人間の建設
友達が絶賛していたので、気になって読んでみたらこれが面白い。
小林秀雄は名前くらいは知っていたが、岡潔という人については全く知らなかった。小林秀雄は作家・批評家であり、岡潔は数学者である。文系と理系の天才たちのよる、対談のような雑談である。その話題は、学問についてから始まり、芸術、酒、詩、数学など様々な方面へ飛び交う。
この本の中には直観とか情緒なんて概念が頻出する。このあたりの専門的な話には踏み込みまないが、例えば大学生になれば当然に学問を行う。社会人になっても何かを学ぶ機会はあるはず。そうした学びの機会に、二人が話す直観のようなものが役に立つと思う。
「文章を書くことなしには、思索を進めることはできません」

この言葉を信じて、何となく自分も文章を書こうと思います。

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人間の建設 新潮文庫

 

思考の整理学
書店に出かけるたびに見かけていたので、あまりにも気になって買った本。名著であることは広く知られているが、期待以上の学びを得た。
題の通り、思考を整理する術を教えてくれる本であるが、その内容は自分たちの学校教育を振り返ることから始まる。
自身が受けてきた学校教育を今一度見直し、アイデアの取り出し方や整理の仕方の具体的な方法が書かれている。
論文を書く大学生のみならず、社会人や創作家にも役に立つ一冊だと思う。

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思考の整理学 ちくま文庫

 

社会学
社会学とはどのような学問か、また社会学はどのような歴史をたどってきたか。そんなところから本書は社会学という学問全体を書き記している。最近では「○○の社会学」のような題で多くの本が出版されているが、この流れをみてわかるように、社会学は様々な分野へ届く。社会で発生する多くの現象の裏には、社会的な働きが隠れている。ではその働きをどのように眺めるか。社会学の理論を利用することで社会の諸問題を分析することができるかもしれない。研究者でなくても、自身の置かれた社会的立場から、どう社会を捉えるか。
学生、社会人、研究者の幅広い層に役立つ知識を本書は含んでいる。
ただ600ページを超す新書を読むのには本当に苦労した。この本についても、あとでじっくり語りたいと考えている。

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社会学史 講談社現代新書

 

読まずに死ねない哲学名著50冊
高校3年生の冬から大学入学までに読んだ本。哲学を何となく知ってみたい、と思って買った。哲学がどこから始まったのか、という歴史から始まり、各時代の哲学の名著を数ページで紹介し、50冊分の哲学書を解説している。きっと哲学マニアや哲学を勉強してきた人たちにとって、本書の解説は不十分だと思うかもしれない。また、その哲学書を理解するためには実際に原著を読んでみることが大事である、と主張したくなってしまうかもしれない。
それでも哲学の歴史とこんな哲学書、哲学者が存在する、というようなガイドブックとしては私にとって最適な一冊だった。
人類の叡智をなんとなく知っておこうかな、という人にはぜひおすすめしたい一冊。

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読まずに死ねない哲学名著50冊 フォレスト出版

 

桃太郎は盗人なのか?-「桃太郎から考える鬼の正体」-
小学生の「鬼」についてまとめた自由研究を出版した一冊。
桃太郎は盗人なのか?という問題提起から始まり、全国の桃太郎のお話や、鬼にまつわる伝記を調べ、それぞれ比較していき、桃太郎は何者か、鬼とは何者かに迫る自由研究。
そうか、研究とはこうやってやるのか、と小学生に教えられた気分だった。
物語によって桃太郎の性格や、鬼ヶ島へ行く理由、鬼の悪事などが異なる。鬼とはなにか、霊か、海賊か、人間か、はたまた神か。
彼女はただ調べてまとめるだけではなく、自分なりに桃太郎や鬼の正体に迫ろうという姿勢をもっていた。
研究をする大学生は必読であると感じるが、鬼への考察は小学生ながらに大変興味深いので、読み物としても面白い。
鬼滅の刃をみた彼女は鬼への新しい考察が浮かんだだろうか。。。

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桃太郎は盗人なのか? 新日本出版社


マンガでわかる統計学
統計学を独学で勉強しようとしたときに、教授がこれを、といって薦めてくれた一冊。
題の通り、女子高生が統計学を勉強していく物語をマンガにしたものであるが、その中身はとても濃い。
カテゴリーデータ、数量データなどの統計学の超基本的なところから始まり、相関係数や検定などの必要最低限の知識までを教えてくれる。この本を読んだおかげで、その後の統計学の勉強がスムーズに行えた。
大事なことはやはり基本的なことである。特にこの本ではアンケート集計など、具体的な例をマンガでわかりやすく説明してくれている。
授業で統計学の入門を受けなかった人で、独学で統計学を学びたい人がまず初めに手に取りたい一冊。
社会人でも、現代のデータ社会で生きていくうえで統計学は役に立つと思われる。
マンガの絵も可愛い。

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マンガでわかる統計学 オーム社

 

漫画版 世界の歴史 集英社文庫
大学生にもなって、世界史を知らないのはまずいよなあ、と思ったけど、世界史の教科書を一から読むのはめんどくさい。そう思っていた。
歴史をまとめた漫画本には多くの種類があるが、この集英社文庫版が一番安かったので買った。文庫なのでかさばらない。
元々小学生や中学生でも理解できるように描かれた漫画なので、とても読みやすかった。
私は物語が好きだが、歴史も一つの存在した物語なのである。
子どもの頃に歴史の面白さに気づけなかったのは後悔するばかりであるが、大人になった今、歴史を読むことは面白い経験になった。

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漫画版 世界の歴史 集英社文庫

 

 

春って嫌な気分になるよね。坂口安吾『桜の森の満開の下』

 今回は坂口安吾桜の森の満開の下』という作品を紹介します。

自分の大好きな小説なので、最初に紹介したいと思っていました。

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桜の森の満開の下講談社文芸文庫

 僕は古本を集めるのが趣味なのですが、この本も古本屋を歩いているときに見つけた本でした。短編集なら気楽に読めるだろうと思って買ったのを覚えています。

 

 初めて読んだとき衝撃を受けました。この『桜の森の満開の下』という短編だけはとにかくすごかった。

 

 物語は筆者が桜の花について語るところから始まります。

 今でこそ桜の花というのは、みんなで集まってお花見をしたりして、新しい季節を楽しく迎え入れるような陽気に仕上がっていましたが、昔の人は桜の花の下は怖ろしいと思っても絶景だとは思わなかったそうです。

 そんな語りから始まり、舞台は鈴鹿峠というとこへ移ります。そこでは一人の山賊が旅人から物品や女を奪って生活をしていました。その山賊もまた、桜の花を怖ろしく思っていました。

 八人目の女房を奪ってきた時、山賊は不思議に思いました。その女は大変美しく、ワガママでしたが、山賊の男はその女に魅了されていたのです。今までいた女房のほとんどを殺すようにその女は命じました。残ったのは一番醜かったビッコの女でした。

 山賊と女とビッコの女は山を離れ、都で暮らし始めます。女は山賊に人の首を持ってくるよに命じます。男はそれに従い、人を殺し、首を持って帰ります。女は首でママゴトのようなことをして遊びます。

 そのうち、男は山の桜を思い出し、山に帰りたいと言います。二人はビッコの女を都に残して山に帰りますが、桜の森の下に来た時、女が鬼に変わって男を襲います。男は必死に抵抗して、女を殺してしまうのです。最後は男が悲しみに涙を流しながら、二人が花びらになって散っていくところで終わります。

 

 短編小説ならではの密度というか、濃さを味わってもらいたいです。語りたいことは多いですが、僕が読んでいて気になった点や、ここに注目して欲しいという点をいくつか挙げておくので、読むときの参考にしてみてください。

  • なぜ山賊は女の美しさによる不安と、桜の下にいるときの不安を似ていると思ったのか
  • 都へ出発するときの、山賊と女が桜の花について言い合う場面
  • 女はなぜ坊主の首を憎たらしく扱ったのか
  • 山へ戻る時、女がビッコに言い残した「じきに戻ってくるから待っておいで」の意味(気になる!)

 

 本当は感想などを書きたいのですが、とんでもなく長くなりそうなのでやめておきます。このブログは気軽に読んでもらうことをコンセプトにしてるので、変に冗長なものは読んでいる側も飽きてしまうと思うからです。

 ですが、この本を読んで思ったことを超簡潔にを書くとすれば、

 

 美しさを怖れるということはなんとなくわかる気がする。美しさは自分の全てを奪っていってしまうかもしれないから。

 

ということです。

 

 読むたびに発見のある作品ですのでぜひ一度読んでみてください。

 

桜の森の満開の下・白痴 他12篇 (岩波文庫)
 

 

 

桜の森の満開の下 (講談社文芸文庫)

桜の森の満開の下 (講談社文芸文庫)

 

 

 

桜の森の満開の下 (立東舎 乙女の本棚)

桜の森の満開の下 (立東舎 乙女の本棚)

  • 作者:坂口 安吾
  • 発売日: 2019/12/19
  • メディア: 単行本
 

 

 

 

 

 

体育のバレーって難しくなかった?

こんなタイトルであれですが、読書ブログというものを始めます。

 

今年は小説は夏目漱石しか読まない!

そう決めてから、小説以外はできるだけ幅広く読もうと思い、最近は幅広いジャンルの本を読んでいます(社会学だとか、植物に関する本とか)

 

馴染みのないジャンルってどうしても難しいので、自分の頭の整理とアウトプットを兼ねて読書ブログを始めようと思いました。

 

ここでタイトルの話になるのですが

体育って色々なスポーツをやるじゃないですか、バスケとかソフトボールとかバレーとか。

ほとんどは未経験のスポーツやらされませんでした?

たまにはバスケ部の子がいたり野球部の子がいたりしましたけど、ほとんどは素人が集まってやっていたような気がします。

あれ、自分は結構楽しかったなあと思っていて、当時は下手くそなりに楽しんでいました(成績はかなり低かったですが)

バレーなんか特に難しくて、正しいボールの打ち返し方をしないとなかなか試合になりません。夢中になってボールを追いかけていると、ついには足まで出してボールを相手のコートに返そうとする。自分のプレーはすべて間違っているなあと思いながら、それでも夢中でボールを打ち返す。それがとても楽しかった。

 

この経験が、読書と似ているなあと私は思います。

 

私は文学に親しいわけでもなければ、大学で哲学の勉強をしたわけでもありません。

そんな素人の私も、文学作品や哲学書なんかを読んで自分なりの感想や解釈を見つけます。難しいものでも、夢中になって読んでいると、なんだか楽しい。

これはこういうことかな?

この言葉はこういう解釈でいいのかな?

という具合に、自分なりのボールの打ち返し方をみつけるわけです。

 

詳しい人がみたら間違っているかもしれない、その時は、正しい読み方を教えてもらう。これが大事なことです。

 

バレー部の人は「それ間違っているよ」と言うのではなくて、「こうやって打ち返すといいよ」と言ってくれれば、素人は嬉しいのです。

 

(今まで書いてきたことで自分の言いたいことがはっきりと伝わっているといいな・・・!)

 

つまり、素人は素人なりにいろんなものを楽しむので、温かい目でみてねってことです!

 

もう眠いので寝る!

 

書きたいことはたくさんあるけど!

今日は一回目だから!

おやすみ!