春って嫌な気分になるよね。坂口安吾『桜の森の満開の下』
自分の大好きな小説なので、最初に紹介したいと思っていました。
僕は古本を集めるのが趣味なのですが、この本も古本屋を歩いているときに見つけた本でした。短編集なら気楽に読めるだろうと思って買ったのを覚えています。
初めて読んだとき衝撃を受けました。この『桜の森の満開の下』という短編だけはとにかくすごかった。
物語は筆者が桜の花について語るところから始まります。
今でこそ桜の花というのは、みんなで集まってお花見をしたりして、新しい季節を楽しく迎え入れるような陽気に仕上がっていましたが、昔の人は桜の花の下は怖ろしいと思っても絶景だとは思わなかったそうです。
そんな語りから始まり、舞台は鈴鹿峠というとこへ移ります。そこでは一人の山賊が旅人から物品や女を奪って生活をしていました。その山賊もまた、桜の花を怖ろしく思っていました。
八人目の女房を奪ってきた時、山賊は不思議に思いました。その女は大変美しく、ワガママでしたが、山賊の男はその女に魅了されていたのです。今までいた女房のほとんどを殺すようにその女は命じました。残ったのは一番醜かったビッコの女でした。
山賊と女とビッコの女は山を離れ、都で暮らし始めます。女は山賊に人の首を持ってくるよに命じます。男はそれに従い、人を殺し、首を持って帰ります。女は首でママゴトのようなことをして遊びます。
そのうち、男は山の桜を思い出し、山に帰りたいと言います。二人はビッコの女を都に残して山に帰りますが、桜の森の下に来た時、女が鬼に変わって男を襲います。男は必死に抵抗して、女を殺してしまうのです。最後は男が悲しみに涙を流しながら、二人が花びらになって散っていくところで終わります。
短編小説ならではの密度というか、濃さを味わってもらいたいです。語りたいことは多いですが、僕が読んでいて気になった点や、ここに注目して欲しいという点をいくつか挙げておくので、読むときの参考にしてみてください。
- なぜ山賊は女の美しさによる不安と、桜の下にいるときの不安を似ていると思ったのか
- 都へ出発するときの、山賊と女が桜の花について言い合う場面
- 女はなぜ坊主の首を憎たらしく扱ったのか
- 山へ戻る時、女がビッコに言い残した「じきに戻ってくるから待っておいで」の意味(気になる!)
本当は感想などを書きたいのですが、とんでもなく長くなりそうなのでやめておきます。このブログは気軽に読んでもらうことをコンセプトにしてるので、変に冗長なものは読んでいる側も飽きてしまうと思うからです。
ですが、この本を読んで思ったことを超簡潔にを書くとすれば、
美しさを怖れるということはなんとなくわかる気がする。美しさは自分の全てを奪っていってしまうかもしれないから。
ということです。
読むたびに発見のある作品ですのでぜひ一度読んでみてください。